用地仕入れ営業の1日は、朝の情報収集から始まり、地主や不動産業者への訪問、現地調査、収支シミュレーションや稟議資料の作成まで、外回りとデスクワークが交互にやってくる構成になります。
案件の進捗によって1日の中身は大きく変わるため、決まったタイムスケジュール通りに動ける日は多くありません。ここでは東京23区内で10年間動いてきた体感をもとに、典型的な1日の流れを時間帯ごとに紹介します。
用地仕入れ営業に転職を考えている方から、「1日の流れがイメージできない」という声をよく聞きます。営業職といっても飛び込み訪問を繰り返す仕事ではなく、情報収集・現地確認・社内調整という異なる性質の業務が1日の中に混在しているのが特徴です。今回は、私が東京23区内で用地仕入れ営業をしていた頃の体感をベースに、ある1日の過ごし方を時系列で紹介します。会社や担当エリア、案件の進捗状況によって前後する部分はありますが、大枠のイメージをつかむ材料にしてもらえればと思います。未経験から用地仕入れ営業への転職の入口を先に見ておくと、この1日が何のための時間なのかがつかみやすくなります。
朝は情報のインプットから始まる
出社後まず取り組むのは、前日から当日朝にかけて入ってきた土地情報のチェックです。不動産業者からのメール、レインズの更新情報、社内で共有される新着案件など、確認すべき情報源は一つではありません。情報を見た瞬間に「動く価値があるかどうか」を判断するスピードが、その後の1日の質を左右すると感じています。良さそうな案件があれば、この時点でアポイントの電話を入れることも珍しくありません。人気エリアの土地情報は動きが早く、朝一番の連絡が結果を分けることもあります。
あわせて、進行中の案件について前日からの状況変化がないかも確認します。地権者の気持ちが変わっていないか、競合の動きに変化はないか。こうした細かな変化を朝のうちに把握しておくことで、その日1日の優先順位が見えてきます。
午前から昼にかけては地主・不動産業者への訪問

朝の情報整理が終わると、外に出て地主や不動産業者への訪問に向かうことが多くなります。相手は個人の地権者のこともあれば、日頃から情報をもらっている仲介会社や不動産業者のこともあります。用地の情報は公開される前に動きが決まっていることが少なくないため、こまめに顔を出して信頼関係を積み重ねるという地道な動きが結果的に情報の早耳につながります。
地権者との商談では、価格の話だけでなく、売却を考えるに至った背景や今後のご意向を丁寧に伺うことを大切にしてきました。相続や住み替えなど、土地を手放す理由は一件ごとに異なります。事情を理解した上で条件を提示できるかどうかで、その後の交渉の進み方がまったく変わってきます。
同じ職種でも、車で回る地方と電車移動中心の都心では1日の組み立てが変わります。地方から東京の用地仕入れ営業への転職でその差を扱いました。
午後は現地調査と査定、そして事務所での資料作成
昼を過ぎると、気になる土地があれば現地調査に向かいます。役所で用途地域や建築規制を確認し、現地では境界の状況や周辺環境、接道の幅員などを自分の目で確かめます。図面や登記簿だけでは見えてこない情報が現地には必ずあり、現地に足を運ばずに仕入れの判断をすることはないというのが、私が一貫して守ってきたルールです。
現地調査を終えて事務所に戻ってからは、事業収支のシミュレーションに入ります。想定する建物のプランをもとに、想定売上から用地取得費や建築費、諸経費を差し引いて、事業として成立するかどうかを数字で検証します。ここでの精度が甘いと、後の稟議で説得力を持たせられません。宅地建物取引士としての知識に加えて、事業収支を自分で組んできた経験が、この工程では特に役立っていると感じます。
夕方は稟議書作成、社内の合意形成にかける時間

収支の目処が立った案件は、稟議書としてまとめて社内の決裁ルートに乗せます。用地仕入れは金額の大きい意思決定になるため、上長や役員に対して事業性とリスクの両方を筋道立てて説明する資料が必要です。数字の裏付けだけでなく、その土地ならではの懸念点(権利関係、近隣状況、競合状況など)を隠さず盛り込むことが、後々の信頼につながると考えています。
稟議が通れば地権者への条件提示に進み、通らなければ何を補強すべきかを整理して再検討します。この社内合意形成のプロセスは、外から見えにくい部分ですが、用地仕入れ営業の仕事の中でも特に重要な工程だと感じています。
夜は翌日の準備と、案件によっては地権者との時間
定時での帰宅を意識しつつも、地権者の在宅時間に合わせて夜に訪問が入ることもあります。日中忙しい共働き世帯の地権者などは、夜の時間帯でないと落ち着いて話せないケースもあるためです。毎日ではありませんが、案件が動いている時期はこうした夜の対応が重なりやすくなります。事務所に戻ってからは翌日のアポイントを整理し、優先順位をつけて1日を締めくくります。
- 朝一番の情報チェックで、その日動くべき案件の優先順位を決める
- 現地確認を省略せず、図面だけで判断しない
- 稟議資料はリスクも含めて正直に書く。都合の良い数字だけを並べない
参考までに、私の場合の1日を実際の時間で書いておきます。朝は通勤中に不動産関係のニュースや動画をチェック。出社したら、進行中の仕入れ案件と工事中の案件を確認します。
昼間は隣地対応、業者とのアポ、検討している土地の現地訪問、役所調査。事務所に戻ってから事業計画を作り、メールを返す。そのあと案件の査定に入るので、家に着くのが22時ということも珍しくありませんでした。査定を後回しにできない時期は、どうしてもこうなります。
曜日や案件の進捗によって1日の中身は大きく変わる
ここまで紹介したのはあくまで一つのパターンです。実際には、新規情報が少ない週は事務所でのリサーチや既存案件のフォローに時間を使う日もあれば、複数の案件が同時に動いていて外回りだけで1日が終わる日もあります。1年間で20棟前後の案件を動かしていた時期は、月によって1日の忙しさの波がかなり大きかった印象があります。会社によっても、担当エリアの広さやチームでの分業体制によって1日の過ごし方は変わってきますので、面接の段階で「典型的な1日の流れ」を具体的に聞いてみるのも判断材料になるはずです。
この仕事には、季節で決まる繁忙期がありません。年度末に取引が増える業界は多いのですが、仕入れの忙しさは暦ではなく案件が入ったかどうかで決まります。案件が動き出せば現地調査・役所調査・稟議書の作成・業者対応が一度に重なり、逆に動いている案件が少ない週は静かです。「何月が忙しいか」より、同時に何件を持たされるかのほうが1日の中身を左右します。
会社選びの視点については、会社の見分け方をまとめた記事でも詳しく触れています。1日の忙しさの実態は、会社の案件量や人員体制と切り離せないテーマです。
土日の実態 ー 業務は平日中心でも、休みが土日とは限らない
個人のお客様を相手にする仲介営業だと、土日は内見や契約の予定が集中しやすく、休みが平日にずれることも珍しくありません。用地仕入れ営業の場合、相手は主に地権者や不動産業者、つまり個人の買主・借主ではなくBtoBに近い立場の相手です。地権者の都合に合わせて夜間の訪問が発生することはあっても、「お客様が休みの日である土日に合わせて営業する」必然性が薄いのがこの仕事の特徴だと感じています。役所調査も不動産業者との打ち合わせも平日に完結することがほとんどで、業務そのものは平日中心です。
ただし、業務が平日中心であることと、休みが土日であることは別の話です。不動産会社は火曜・水曜を定休日にしているところが多く、その場合は土日が出勤になります。私の会社もそうでした。
土日に出ても役所は閉まっているので、調査が必要な案件は進みません。正直なところ、土日に休めるほうが効率は良いと感じています。土日休みの会社もあるので、そこは羨ましく思います。
もちろん、地権者の都合や案件の重なり方次第で休日に対応が入ることはあり得ますし、会社によって案件の持ち方や当番制の有無も違います。「土日に営業しなければならない必然性は薄いが、会社の定休日が土日とは限らない」というのが実態に近いはずです。求人票の休日欄と、実際の定休日は必ず確認してください。より詳しい残業・休日の傾向は、用地仕入れ営業は本当にきつい?の記事でも触れているので、あわせて確認してみてください。
1日の使い方そのものより、どこに時間を寄せるかで数字が変わります。用地仕入れ営業で成果を出すコツは別の記事にまとめました。
よくある質問
何時ごろ帰れますか
定時での帰宅を意識して動きますが、案件の査定を後回しにできない時期は遅くなります。私の場合、家に着くのが22時ということも珍しくありませんでした。毎日そうなるわけではなく、動いている案件が重なった時期に偏ります。
外回りとデスクワークの割合はどのくらいですか
決まった割合はありません。新規の情報が少ない週は事務所でのリサーチや既存案件のフォローが中心になり、複数の案件が同時に動いている日は外回りだけで終わります。日単位ではなく週単位で振れると考えてください。
飛び込み営業はありますか
飛び込み訪問を繰り返す仕事ではありません。情報は日頃から付き合いのある仲介会社や不動産業者から入ってくることが多く、こまめに顔を出して関係を積み重ねる動き方が中心になります。ただし取引先がまだ無い新人の時期は、情報の入り口を作るために足を使う場面があります。
土日は休めますか
業務そのものは平日中心です。役所も金融機関も平日しか開いていないためです。ただし業務が平日中心であることと、休みが土日であることは別で、不動産会社は火曜・水曜を定休日にしているところが多く、その場合は土日が出勤になります。求人票の休日欄と、実際の定休日を必ず確認してください。
まとめ
用地仕入れ営業の1日は、朝の情報収集、地主・不動産業者への訪問、現地調査、収支シミュレーション、稟議書作成という異なる性質の業務が組み合わさって成り立っています。外回りとデスクワークのバランスは案件の進捗次第で変わり、決まった型があるわけではありません。だからこそ、1日の流れをイメージするだけでなく、自分がどの工程に一番やりがいを感じるかを考えてみることが、転職後のミスマッチを減らす近道になると思います。
出典・参考情報(2026年9月20日確認)
- 労働基準法第32条(労働時間)、第36条(時間外・休日労働に関する協定および上限規制)、第39条第7項(年5日の年次有給休暇の時季指定義務)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「不動産営業員」(職務内容に関する記載を参照)
- 各転職サイトに掲載されている用地仕入れ・開発営業求人の勤務時間・休日の記載傾向(2026年9月確認)
※1日の流れは会社・拠点・担当エリアによって大きく異なります。本記事は一般的な整理であり、特定の企業の勤務実態を示すものではありません。労働時間に関する疑問や不安がある場合は、勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署等の窓口にご相談ください。
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