用地仕入れ営業の退職は、引き継ぐ案件が多いぶん他職種より時間がかかります。民法上は申入れから2週間で退職できますが、実務では1〜3か月前の申出が現実的です。
大事なのは、案件の状況を整理してから切り出すこと。進行中の案件リストと論点を手元に用意しておくと、引き止めの場でも話が前に進みます。
仕入れの仕事は、案件が個人に紐づきやすい構造をしています。地主との関係も、仲介会社との信頼も、担当者個人に付いている。だから退職の切り出し方を間違えると、引き継ぎが長引き、関係先にも迷惑がかかります。この記事では、制度上の決まりを確認したうえで、実務としての段取りを整理します。
1. この職種の退職が難しい理由
理由は3つあります。ひとつは案件の期間が長いこと。着手から決済まで年単位かかる案件を複数抱えている状態が普通で、「きりの良いタイミング」がそもそも来ない職種です。
ふたつめは、情報が個人に紐づいていること。地主の家族構成や過去の経緯といった、資料に残っていない情報を担当者が持っています。引き継ぎで抜けると、後任が一から関係を作り直すことになります。
みっつめは、代わりがすぐに見つからないこと。仕入れ部門は少人数で回している会社が多く、欠員の影響が大きい。だから引き止めも強くなります。
2. 制度上の決まりと実務の落としどころ
期間の定めのない雇用契約では、解約の申入れから2週間を経過すれば契約は終了します(民法第627条第1項)。就業規則に「1か月前までに申し出ること」と書かれていても、法的にはこの原則が優先されます。
ただし実務では、就業規則の定めに沿って動くほうが後味がよい。用地仕入れの場合、引き継ぎに時間がかかることを考えると1〜3か月前の申出が落としどころになります。有給休暇の残日数も逆算に入れてください。
切り出し方を考える前に、その辛さが職種そのものによるものか、いまの会社によるものかを分けておいてください。用地仕入れ営業がきついと言われる理由を、会社による差も含めて整理しました。
3. 誰に、いつ伝えるか

順番は、直属の上司が先です。先に人事や同僚に伝わると、上司の面子を潰す形になり、以降の調整がやりにくくなります。
タイミングは、内定が確定してから。口頭で「考えている」と漏らす段階で伝えると、引き止めの材料を与えるだけです。転職先が決まっていない状態で相談すると、条件改善の提案で話が止まります。
切り出す場は、時間を取ってもらう形で。「ご相談したいことがあるので、30分ほどお時間いただけますか」と事前に伝えておくと、落ち着いて話せます。
4. 引き継ぎの進め方

- 現在の進捗:どの工程まで進んでいるか、次に何が必要か
- 相手方の情報:窓口になっている人、意思決定者、過去の経緯
- 条件面の経緯:提示した価格、相手の反応、譲歩の余地
- 社内の論点:稟議で指摘された点と、その対応状況
- スケジュール:契約予定日、決済予定日、期限のある手続き
3番目は資料に残っていないことが多い部分です。ここを引き継がないと、後任が過去の経緯を知らないまま交渉に入り、相手の信頼を落とします。
案件の棚卸しは、自分の職務経歴書の材料にもなります。書き方は職務経歴書の書き方の記事にまとめました。
用地仕入れの求人は、職種名が「開発営業」「事業用地担当」などに変わっていることがあります。私が見てきた求人ではそちらのほうが多く、探し方で結果が変わります。用地仕入れ営業の転職エージェント比較で、業界特化型・総合型・スカウト型の7サービスを目的別に整理しました。
5. 地権者・仲介会社への伝え方
社外への連絡は、会社の方針を確認してから動いてください。勝手に先に伝えると、社内の調整が崩れます。
伝える際は、後任と一緒に挨拶に行くのが基本です。担当が変わることより、引き継ぎがされていないことのほうが相手の不信を招きます。転職先が同業の場合、競合先への情報持ち出しと見られないよう、会話の内容には注意が必要です。
就業規則に競業避止の条項がある場合は、退職前に確認してください。独立を考えている場合は特に重要です。関連する論点は独立を扱った記事で触れています。
6. 引き止めへの対応
少人数の部門ほど引き止めは強くなります。条件改善の提案が出ることもありますが、いったん立ち止まって考えてください。
判断の軸は、辞めたい理由が待遇だったのか環境だったのかです。稟議が通らない、情報が入らないといった構造の問題は、給与を上げても解決しません。切り分けの手順は辞めたいと感じたときの見極め方にまとめました。
退職の意思が固いなら、理由を前職批判にせず「次にやりたいこと」として伝えるほうが、話が長引きません。
7. 退職日から逆算してスケジュールを組む
内定を受けてから最終出社までの流れを、先に紙に書いてみてください。用地仕入れの場合、次のような並びになります。
- 内定承諾:入社日を仮で決める。引き継ぎ期間を見て1〜3か月先に置く
- 上司へ申出:承諾後すぐ。案件リストを持って臨む
- 退職日の合意:有給の残日数を逆算に入れる
- 引き継ぎ:案件ごとに資料化し、後任と同行する
- 社外への挨拶:会社の方針に沿って後任と訪問
- 最終出社:貸与物の返却、書類の受領
詰まりやすいのは3番目です。会社側は引き継ぎを優先したいので、退職日を後ろにずらそうとします。入社日が決まっている以上、譲れない線は先に示しておくほうが揉めません。
最終出社日には、離職票や源泉徴収票など受け取る書類を確認してください。労働基準法第22条により、退職時に使用期間や業務の種類などについて証明書を請求できます。次の会社で必要になることがあります。
8. 退職理由の伝え方
社内で伝える理由と、次の面接で話す理由は必ずしも同じである必要はありません。ただし嘘をつくと後で辻褄が合わなくなるので、同じ事実を違う角度から話すのが安全です。
社内では、前向きな理由に寄せるほど引き止めが和らぎます。「この会社が嫌だ」ではなく「次にやりたいことがある」。面接では、前職の不満をそのまま言わず、次に求める環境として言い換える。具体的な言い回しは志望動機の書き方を例文つきで解説した記事が参考になります。
9. よくある質問
繁忙期は避けるべきですか
配慮は必要ですが、待ち続けると動けません。用地仕入れに明確な閑散期はないので、抱えている案件の区切りで判断するほうが現実的です。
退職届はいつ出しますか
口頭で合意してから、会社の様式に沿って提出するのが一般的です。日付や様式は就業規則を確認してください。
有給はすべて消化できますか
年次有給休暇は労働者の権利ですが、引き継ぎとの兼ね合いで調整が必要になります。残日数を逆算して退職日を設定するとスムーズです。
まとめ
用地仕入れの退職は、案件が個人に紐づく構造ゆえに時間がかかります。制度上は2週間でも、実務では1〜3か月前の申出が現実的です。
切り出す前に案件を整理し、進捗・相手方・条件の経緯・社内の論点をまとめておくこと。これがそのまま引き継ぎ資料にも、次の選考の材料にもなります。面接での伝え方は面接の受け答えをまとめた記事をどうぞ。
出典・参考情報(2026年9月20日確認)
- 民法第627条第1項(期間の定めのない雇用契約。解約の申入れから2週間の経過により終了)
- 労働基準法第39条(年次有給休暇)
- 労働基準法第22条(退職時の証明。請求があった場合の証明書の交付)
※就業規則で退職の申出時期や手続きが定められている場合があります。競業避止条項の有無を含め、退職前に必ず自社の規定をご確認ください。個別の判断が必要な場合は専門家にご相談ください。
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